人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~

新入生歓迎遠足。① ~出発!~

「―――歓迎遠足ぅ?」








僕はけだるそうな声をあげ、馴染みつつある仲間の顔を見回した。








「そっ。毎年新入生を歓迎するってことで、近くの『要山』(カナメヤマ)って所に登るのさ。その山の頂上には、この島全てを見渡せる、望遠台があるんだぜ」

「そこで飯食って遊んで帰る、ってのが恒例の行事なのさ」








楽しそうに笑う野球部の少年に重ね、隼が歓迎遠足についての説明を続ける。








「それでな、実はその望遠台なんだけど………」








隼があまりにも焦らすため、僕が続きを話すように頼むと彼は手を前に垂らし、舌を出しながら悪戯に笑った。








「出るんだよ………幽霊が」

「………ゆ、幽霊?」








―――しまった。驚いてしまった。
こういったタイプの人間は、相手にしなければ意気消沈するというのに。

案の定、僕の反応を見て、隼は楽しそうに続けた。








「まあ、そうビビるなよ。それでな、その幽霊、望遠台の最上階に深夜の12時に出るそうなんだ。だから、遠足の後にそのまま望遠台に居座って、幽霊を見ようぜ、って話だ」

「………絶対に、嫌だ」

「………ふむ、『物凄く行きたいです』、だって?そうかそうか、可愛い奴め。そんなに行きたいなら仕方ないなあ。それじゃ、明日を楽しみにしてな~」

「―――ち、ちょっと!?」








………抵抗も虚しく、僕は強制的に肝試しをすることになってしまった。
幽霊だとかそういった類が苦手な僕は、頭を垂れ、深い溜息を吐いた。
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