人魚の涙 ～マーメイ・ドロップ～

非常に綺麗な顔をしていて、肌は雪のように白く、腰まで届く長い黒髪は妖しい魅力を醸し出していた。

僕は気付けば彼女をじっと見つめていた。………いや、見惚れていたのだ。

それを察知したのか、彼女は僕の方を見て、きょとんとした顔をした。人通りが少ないところなのだから、当然といえば、当然の反応だった。
彼女は、ばつが悪そうにしている僕から目を反らし、再び海の方へと意識を向けた。




―――彼女はこんなところで何をしているのだろう。そんな疑問が、急に僕の中にぽつりと浮かんだ。

ただ景色を目的に来ているだけなら良いのだが、僕はこの島に来る際、下調べによりここが有名な自殺スポットだということを認知していた。
そのため、悪い方向へと想像は膨らみ、だんだんと不安な気持ちになってきていた。彼女が防波堤の端ギリギリに立ち尽くしているのが、嫌な予感に拍車をかける。




ごくり、と僕の喉がなる。
ゆっくり、ゆっくりと僕は彼女に近づいていく。静かに、悟られないように。

しかし、いくら身を屈めようと存在に気づかれない筈がなく、彼女はまた僕の方を振り向いた。

しまった、と僕は顔をしかめる。だがそれに反して、彼女は微笑んだ。
なぜこの状況下におい