人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「でも………楽しみ、だね」

「え?肝試し??」

「うん、それもだけれど、ね。みんなと一緒に遊ぶっていうこと、それ自体が。私、今までそんなこと、したことなかったから」

「………そっか」








そう、だよね。
美姫さんはそんなこと、したことないんだもんな………。




僕は美姫さんのことを見つめ、彼女のことを愛しく思う僕を、確かに感じた。

………美姫さんが、今までどんな風に生活してきたかはわからないけれど、きっと人に混じって遊びたかったのだろうなって。
そう思うと、胸がいっぱいになり、言葉が詰まった。








「………だから、初めてのことだから、凄く楽しみなの。君も、いるしね?」








美姫さんはふんわりと綻び、そう言った。
彼女の笑みと一緒に、春の気持ちのいい風が僕の制服の裾を揺らした。
< 60 / 69 >

この作品をシェア

pagetop