人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
―――桜の花びらが新緑へと変わり、だんだんと熱気を帯びてきた、初夏のその日。ついに、待ちに待った新入生歓迎遠足の当日を迎えることになった。




僕は大きく膨らんだリュックサックを背負い、海沿いの登校コースを進んでいた。さんさんと照る太陽がアスファルトを熱し、その熱が僕を苦しめる。








「………今日は、暑いなあ………」








じわりと額に浮かんできた汗をジャージで拭いながら、ぽそりと呟いた。

朝見たニュースによると、今日は今年初めての暑さらしく、風もあまり吹いていない。体が元来弱い僕は、温度の変化にも勿論ついていけはしないのだ。




今日の遠足は苛酷なものになるだろう、と考え憂鬱になっていると、聴き覚えのある声が頭に響いた。
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