人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
僕と美姫さんは校門をほぼ同時に、並びながら通る。丁寧にならされた土の感触が、足の裏に拡がる。
僕は、美姫さんの横顔を見た。日光を反射し、白い肌が煌々と輝いている。その顔に軽く微笑を浮かべ、楽しそうに目を細めていた。僕はこの短い間に、彼女の横顔に愛情―――執着にも近いかもしれない―――感情を抱くようになっていた。
僕が彼女の横顔からふと視線を戻すと、突然僕の目の前に分厚い木造の扉が現れた。僕は急に出現した物体に圧倒され(実際、自分からわざわざ近づいていたのだが)、反射的に勢いよく立ち止まった。
美姫さんはどうしたの、というふうに僕をきょとんとして見つめていた。僕は自分がしていたことがばれるのではないかという危惧と、ドジを踏むところだった恥ずかしさから、それをごまかすように愛想笑いを浮かべる。どうやら、僕が呆けている間に、足は随分と前へ進んでいたらしかった。
僕は、あくせくと扉の取っ手を掴み、勢いよく手前へと引く。一度深呼吸して気持ちを落ち着けてから、手で滑らかに空を切り、どうぞ、といったジェスチャーをしてみせる。
美姫さんはそれに気づくとにっこりと笑い、軽く会釈して扉をくぐる。
僕は彼女が校内に入ったのを確認してからそれに続き、扉をゆっくりと閉めた。
僕は、美姫さんの横顔を見た。日光を反射し、白い肌が煌々と輝いている。その顔に軽く微笑を浮かべ、楽しそうに目を細めていた。僕はこの短い間に、彼女の横顔に愛情―――執着にも近いかもしれない―――感情を抱くようになっていた。
僕が彼女の横顔からふと視線を戻すと、突然僕の目の前に分厚い木造の扉が現れた。僕は急に出現した物体に圧倒され(実際、自分からわざわざ近づいていたのだが)、反射的に勢いよく立ち止まった。
美姫さんはどうしたの、というふうに僕をきょとんとして見つめていた。僕は自分がしていたことがばれるのではないかという危惧と、ドジを踏むところだった恥ずかしさから、それをごまかすように愛想笑いを浮かべる。どうやら、僕が呆けている間に、足は随分と前へ進んでいたらしかった。
僕は、あくせくと扉の取っ手を掴み、勢いよく手前へと引く。一度深呼吸して気持ちを落ち着けてから、手で滑らかに空を切り、どうぞ、といったジェスチャーをしてみせる。
美姫さんはそれに気づくとにっこりと笑い、軽く会釈して扉をくぐる。
僕は彼女が校内に入ったのを確認してからそれに続き、扉をゆっくりと閉めた。