人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
―――三十分後。
「………まだ、着かないのかな………」
「………流斗君、それ、十六回目」
ごめん、と僕は美姫さんに頭を下げた。
―――僕は今、非常に疲れている。
山を登ることは知っていたが、この暑さに加え、斜面の急さは予想だにしていなかった。
元々、体力というものが皆無に均しい僕にとって、今は足元に転がる石ころさえもが煩わしかった。
………すると、余程死にそうな顔をしていたのだろうか、美姫さんは僕の顔を心配そうに覗きこんだ。
「少し、休もうか?」
「………すみません………」
「いいのよ。私も疲れていたし………それじゃあ、あそこの木陰に入りましょう」
僕は頷き美姫さんの後に続いて、椅子代わりになりそうな岩に腰かけた。一度だけ、大きく息を吸い、吐き出した。
タオルで汗を拭っていると、す、と美姫さんが横から水筒のコップにひたひたに注いだお茶を、僕に差し出した。
「どうぞ」
「え―――でも、間接―――」
「そんなことは、気にしなくていいの」
「………う、うん………」
僕は躊躇いながらも、お茶をごくごくと飲み干した。
口元を拭き取り、コップの端も拭き取ろうとすると、美姫さんは僕からコップを素早く引ったくった。僕はなんとなく落ち着かない気持ちになり、周りを見た。
「―――あ、あれ………?人が、もう全然いない………」
「本当だわ………少しゆっくりし過ぎたかしら?とりあえず、急ぎましょう」
うん、と返事をして立ち上がり、皆が行ったと思われる方向へと歩き出した。
暑さは余計に増しており、じりじりと照る太陽の光は、さらに強くなっていた。
「………まだ、着かないのかな………」
「………流斗君、それ、十六回目」
ごめん、と僕は美姫さんに頭を下げた。
―――僕は今、非常に疲れている。
山を登ることは知っていたが、この暑さに加え、斜面の急さは予想だにしていなかった。
元々、体力というものが皆無に均しい僕にとって、今は足元に転がる石ころさえもが煩わしかった。
………すると、余程死にそうな顔をしていたのだろうか、美姫さんは僕の顔を心配そうに覗きこんだ。
「少し、休もうか?」
「………すみません………」
「いいのよ。私も疲れていたし………それじゃあ、あそこの木陰に入りましょう」
僕は頷き美姫さんの後に続いて、椅子代わりになりそうな岩に腰かけた。一度だけ、大きく息を吸い、吐き出した。
タオルで汗を拭っていると、す、と美姫さんが横から水筒のコップにひたひたに注いだお茶を、僕に差し出した。
「どうぞ」
「え―――でも、間接―――」
「そんなことは、気にしなくていいの」
「………う、うん………」
僕は躊躇いながらも、お茶をごくごくと飲み干した。
口元を拭き取り、コップの端も拭き取ろうとすると、美姫さんは僕からコップを素早く引ったくった。僕はなんとなく落ち着かない気持ちになり、周りを見た。
「―――あ、あれ………?人が、もう全然いない………」
「本当だわ………少しゆっくりし過ぎたかしら?とりあえず、急ぎましょう」
うん、と返事をして立ち上がり、皆が行ったと思われる方向へと歩き出した。
暑さは余計に増しており、じりじりと照る太陽の光は、さらに強くなっていた。