青の青空
多摩川の土手をまがり、スーパーをすぎて線路を渡ったらドラッグストアの角を左に曲がる。
小学生をこえてコンビニの角を曲がると青は自転車を停めた。

川崎市の郊外にある二階建ての家は、青が小学校3年生の時に新築したママ自慢の一軒家だ。

「AKAHORI」

と表札が掲げられた門の先の薔薇のアーチをくぐり、青は家の玄関の扉を開けた。

「ただいま」

靴を揃えていると、母の芳子(よしこ)がエプロンで手を拭きながら玄関に顔を出した。

「お帰り、青。遅かったじゃない」

「まだ7時前じゃん。
今日の夕飯なに?」

青は芳子の前を横切って、リビングのソファーに鞄を投げると、テレビのリモコンを手にとった。

「青!手洗いうがいしなさいっていつも言ってるでしょ!」

芳子の小言をシカトして、青はテレビのチャンネルをパチパチ変えた。

明日は記念すべき、高校生活初の夏休みの、初日。

ママのお説教なんて聞いてる暇はない。
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