月と太陽の恋愛関係
「カランコロン」
もう一度あの軽い音が鳴った。
今度は俺がドアを開けた音。
「ったく、夕方だってのに何でこんなにあっちーんだよ…。」
俺はさっきの光景を消そうと無意識の内に口に出していた。
ふと前を見ると夜月が口を開けて何か言いたそうにしていた。
「おう、夜月。」
取りあえず声を掛けてみるものの全く反応しない。
「おーい、聞いてっかー。」
もしや、と思いもう一度声を掛ける。
間違いない。
妄想に入っている。
コイツはよく自分の世界に入り込むらしい。
「あーもー、いい加減にしろよ…。」
ため息混じりに呟くがやはり聞こえないらしい。
「ペチッ」
夜月にデコピンをお見舞いしてやる。
するとやっと帰って来たのかおでこを抑え、痛い痛い言っている。
ふと店の奥に嫌な気配を感じた。
じいさんだ…。
こっちを見てる…って言うか睨んでる。
まるで、孫に何をする、とでも言いたいような恐ろしい目だった。
俺は未だに「ったぁー…」と呟く夜月に
「ったく、それ何回やったら気が済むんだよ。
っつか帰るぞ。」
と、半ば呆れ気味に声を掛けた。