月と太陽の恋愛関係
声を掛けてくるでもない夜月。


きっと花火は行かなくてもいいんだろう。

俺ははまた一ページ捲る。


その時

「ねぇ、二宮。」

俺を呼ぶ小さな声が聞こえた。


「あぁ?」

それをつい強い返事で返してしまう俺。


一瞬言葉が詰まったらしい夜月。

でもそんなのは一瞬。

「あ、あのさっ、」

ゴクッ、と唾を飲む音。

そして


「今日…花火‥行かない…よね?」

小さく自信なさげに放たれた声。


「花火…」

ついつい、行く気になってしまいそうになる。
でも駄目だ。

あの音を我慢する事なんて…。

「行かね、だってうるせぇし。
まっ、お前程じゃねーけどな。」

諦めて欲しくて業と言った冷たい言葉。


「そうか…そうだよね!」

無理やり作った笑顔。


「ーっ…ゴメン買い物行ってくるね!」

業と明るい声で涙を隠す。


「ごめんな…。」

届く筈無い言葉を呟いた。


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