月と太陽の恋愛関係
病院に着き、お父さんは俺達を担いで急いで走る。
 
 
「サツキはっ…神崎サツキは…!!」

「B1階の霊安室になります…」


霊安室

その時の俺に意味など分からなかった。
ただ、不安と怖さだけが胸につもっていった。


エレベーターで降りる。


薄暗い廊下、

弟が今にも泣きそうなのを必死にあやし、ついた部屋。


ねずみ色のドアを開け、中に入る。

ぷーんと匂った線香の香りに吐きそうになった。


線香の煙の中に、その姿はあった。

白い布に包まれた人。


「サツキ…サツキっ」

お父さんが泣き崩れる。



「おかあ‥さん…?」

顔にかかった布を取る。

そこには血の気を失った母親の姿があった。



「おかあさん、ねぇ、起きて?
一緒に帰ろう?
おかあさんっ!」


弟も泣きだす。

「もういい、帰ろう夜月…」

お父さんが俺の手を引く。


「やだ、やだ、やだよぉー!
おかぁさぁーん!!!!!」


< 210 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop