【短】知りたい。もう少し。
「……おはよ」
挨拶はしてみるけど、返って来ないのは知ってる。
彼は、私の挨拶に、微かな笑みを浮かべた口元をさらに少し上げ。
そして、手を差し出すだけなんだ。
何度も繰り返してきた、私達の朝の茶飯事。
駆け寄る私は彼の手をとり、彼の片耳からイヤホンを奪う。
何を話すわけでもなく。
何をするわけでもなく。
私達は毎朝、みんなが登校する前の誰もいない教室で手をつなぎ。
窓際の床に座り込んで。
片耳からだけ流れる音楽に耳を澄ますんだ。