隣のヤクザさん
言わなければ気付かれなかったかもしれないのに…!
自爆…。
頭を抱える私を不思議そうに見つめたその人は、また少しだけ首を傾げて。
私は我にかえり、慌てて口を開いた。
「あ!あの、私、小日向くるみっていいます!こっちは弟の幸で…」
後ろで、隠れるようにして私の足にしがみついている幸の肩をとんとんと叩く。
上目遣いに男の人を見上げた幸は、そろそろと前に出てきて、ぺこりと頭を下げた。
男の人も、鮫島圭吾です、と名乗り頭を下げて。
そして、顔をあげてすぐに、慌てた様子でサングラスを取った。
「すみません、つい癖で。サングラスつけたままなんて、失礼ですよね」
あらわれた二つの瞳は、少し釣り目がちな二重。
強い意思がこもっているように見えるその瞳に、吸い込まれそうになる。
思わず見とれてしまい、鮫島さんは、きょとん、として。
私は慌てて目を逸らした。
何故かドキドキしている胸を押さえ、
「こ、ここのことで、何か困ったことだとか分からないことがあったら、私でよければどんどん聞いてください!」
と、自棄に大きな声で言った。
鮫島さんは、一瞬、すこし驚いたように目を見開いたあと、ありがとうございます、とふわりと笑って。
その笑顔に
心臓が、とくんと跳ねた。
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