吉原くん炎上す
「なにか証拠になるものってあるかな?」
私は吉原くんに訊くとすぐさま彼は言った。
「僕自身の体に刻みこまれたものが証拠になるかな…」
そう言うと、彼は立ち上がり「ちょっとトイレ」と言って後方にある店内のトイレに歩いて行った。
しばらくすると携帯を持ったまま席に戻り、画面を私に見せた。
それは、彼の肩の画像だった。そこには痣や煙草を押し付けたと思われる火傷の跡。
「これ以外にもあるんだけど、自分で撮るのは難しい場所なんだ。どんな構図が良いとかあれば、ちょっと協力してもらえればいくらでもあるよ」
吉原くんの顔は笑ってはいるけど、きっとこれを見せるのは躊躇いがあったんだろうな。少し笑顔に陰りがある。
でも、彼のために必要な事なのだ。
「わかった。その画像送って。必要があれば追加でお願いするかも」
私は彼の目を見ることもできなくて、視線を合わせる事ができなかった。
「ねえ、吉田さん」
吉原くんが私の目をじっと覗きこむ。
「今まで全然僕は吉田さんがやる事について興味がなかったんだ。当然、信じてはいたけど。実際に吉田さんはどうしようとしてるの?」
吉原くんには私の計画は教えていない。
それでも彼は私がやる事に一切に異議を唱えていない。
実はそれが彼の状態を現しているんだと思う。
いろいろな事を諦めている。
そういう目で世の中を見ている。
でも少しずつ変わってきた証拠なんだろうと思う。
だから私は彼に私の狙いをちゃんと説明する事にした。