吉原くん炎上す

その後、私たちは多分初めてこの件とは関係ない話題で盛り上がった。

私が来る途中に深夜特急を持参していた事がきっかけ。


「意外だな。吉田さんが沢木耕太郎とか好きなの?」

全然、好き嫌いとかではなく知らなかったんだよ。


「これは吉原くんの影響だよ。いつもこういうの読んでいたじゃん」


「へー、それも意外。僕の趣味が知られてたとは」


「お隣さんだからね。何読んでんのかなーって」


「空気のようになりたかったんだけど、生きている以上は無理なんだな」

吉原くんは空気になりたかったんだ。


「今は知らない人なんていないけどね」


「まったくだ」

そういうと吉原くんは笑った。
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