吉原くん炎上す

会っていないうちに読んだ本について二人で話をした。

吉原くんは読む本が無くなってしまったみたいで、最近は専ら周辺の山々でトレッキングばかりしているらしい。

夜は地図を見たりして、次に行く場所を考えているんだってさ。

前に約束した本を持ってきたよ、と教えるとすごく喜んでくれた。

相変わらず、東南アジアにいきたいのかと聞いてみたら「今はいい」だって。


「でも、十代のうちには行きたいんだよね。やっぱり。以前は逃避したいって思っていたけど、今は純粋に行ってみたいって思う」

それを聞いてちょっと安心した。

ここに慣れすぎてしまって、ここに骨を埋めるのは悪くないけど、それは吉原くんらしくない気がしたから。

誠に勝手ではあるけどね。


「明日さ、二人で諏訪の街のほうに行こう。明日は僕は全面的に休みだから」

そう言って照れくさそうに頭をかいた。


「デートだねー」

そう言うとますます照れてしまったみたい。

やれやれ。手のかかる人だこと。
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