吉原くん炎上す
「で。どうしたの?電話してくるなんて」
彼の声のトーンは一定だ。
でも、電話で話していると少しだけ彼の感情が見えてくる気がする。
「うん。あの日以降ずっーっとメールしてたんだよ。大丈夫かなって」
「ああ、そうか。ごめん。しばらく電子的なやり取りを控えているんだ。メールには気がついていたけど」
「捕まったか、死んだかって心配してたんだよ」
「それはごめん。捕まっていないし、生きているよ」
「いまどこにいるの?」
「山梨の山の中。辛うじて携帯は繋がる場所」
「いつから?潜伏でもしてるの?」
「あの日からずっと。潜伏?うまいこと言うね。有る意味そうだね」
そう言うと吉原くんは少しだけ笑った。
ちょっとだけ声を出して。
多分、笑い声を聞いたのは初めてだ。