愛はそこにありました。
目を開ける
そこには白い服の女の人と博斗サン…
「……ここは?」
「ゆあ…倒れたんだよ」
「ここは病院よ。アナタは栄養失調と過労…これじゃ赤ちゃんが可哀相よ?」
え…
赤ちゃん…
エコー写真を渡される
「8週目。予定日は8月10日頃ね。」
これがアタシの赤ちゃん…
アタシの家族…
白黒のエコー写真の中に
薄いピンクの塊を見た気がした…
アナタは…女の子ね?
博斗サンが口を開く
「あの時の…だよね…俺!父「アナタは父親にはなれないの」」
ビックリしてる…
そうだよね
アナタの赤ちゃんがここにいるのに…
「子供を理由にしたくない。この子でアナタを繋ぎとめたくはない…アタシは博斗サンを家族とは思えない。」
弥門から卒業した時に学んだ事。
同じ事はしない…
それに…
博斗サンは家族を持つタイプの人間じゃない…
本当に最高の物を貰ったから…アタシは一人でも
大丈夫。
「認知だけ…お願いします…それだけは…この子の権利だから…」
数日後
博斗サンは胎児認知をしてくれて
アタシは退院後、ミューズのオーナーと相談し、新しい部屋を提供してもらい、引っ越した。
出産後、ミューズに戻る約束で…
アタシは何年かぶりに
父親に電話した
妊娠してる事…
未婚で産む事…
認知だけしてもらった事…
父親は電話の向こうで涙ぐみながら
「母さんの腹の中にお前がいるとわかった時と同じくらい…嬉しいよ…」
体大事にしろよ、と何度も何度も言いながら
電話を切った…
涙が止まらなかった…
アタシの母親は
その後何度も電話してきては
「おろしなさい」
「孫の名前はアタシが決める」
「孫はアタシが育てるから実家に帰って来なさい」
その度に電話の向こうで父と喧嘩してた
父さん…アタシ…
愛されてたんだね…