夢のお告げ
夢のお告げ
『近い未来そなたに生まれる子供に巨=ナオと名付けるが良い。やがて悩みは回避されるであろう』とその魔女が囁いた。
それはある日ひよりが見た不思議な夢の断片にすぎなかった。だがひよりの目覚めと共にその『巨=ナオ』と言う名前は深く心の底に刻まれいつしかひよりの意識から自然に消えた。

 やがてひよりはある青年と出会い恋をして愛を育み結婚をし、お腹に二人の子供を宿した。
「ふむ。お腹の子は少し小さ目のようですね」
 とその担当医は口を開いた。

「はい。私少し食が細いので多分そのせいかも?知れません」
 とひよりは静かに言った。

「そうですか。君一人の体ではないのですから、なるべくお腹の赤ちゃんのためにも栄養のある食べ物を沢山摂るようにして下さいね」
 と担当医は穏やかにアドバイスをした。

「はい。解りました」

 定期検診の帰り道ひよりの脳裏にはかつての夢が鮮明に甦った。
遠い昔にひよりが見た『やがてそなたに生まれる子供に巨=ナオと名付けるが良い。やがて悩みは回避されるであろう』とその魔女が囁いたあの夢である。

 その夜ひよりは仕事から帰った夫に夕食を食べながら、定期検診でお腹の子が小さ目である事を指摘された旨の結果を報告した。
「あはははは。ひよりおまえは結構細身の体をしているし、普段からあまり食べないからお腹の子もおまえに似たんだろう」
 と夫も笑いながら言った。

「そうかもね。でも私の父と母もどちらかと言うと細身だから私のは多分遺伝だわ」
 とひよりはその夫の言葉に半ば反発する形で意見を返した。

< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop