恋は甘く、ときにはほろ苦く…(完)
「あの…さっき桜を描いていましたよね」
手を止めずに聞いてみた。
入ってきたとき、ちらっと見えたのだ。
「あぁ。桜が好きなんだ」
桜は木の桜ってわかっていたけれども、一瞬でもドキッとした。
「そういえば、君の名前は?」
興味を示してくれたのだろうか。
嬉しい。
「私の名前は大洲桜と言います」
「オオシマサクラ?」
「はい」
じっと彼は私のことを見てきた。
「知っている?桜でも種類があって、その中で一番有名なのはソメイヨシノと言う桜だよ」
そのぐらいの知識なら私にもある。
「そして、ソメイヨシノは日本の桜を代表とする桜なんだ。そのソメイヨシノの片親とされるオオシマザクラって知っているかな」
少し嬉しそうに話す彼。
オオシマザクラ…?
「君の名前と似ているってさっきから、思ったんだよ」
思わず鉛筆を描いていた手が止まった。
「ソメイヨシノも好きだけど、俺は一番好きな花はオオシマザクラなんだ」
名前覚えてもらえたんだ。
その前に…オオシマザクラが好きって…
私のこと好きって言っているみたいで嬉しかった。