恋愛両立
「ダメ?」
電話の向こうで聞こえる声。
甘えたようなその声にドキドキが鳴り止まない。
ずるいよ。こんなの。
マンションのエントランスを出ると壁にもたれた敦くんがいた。
「あ、早紀ちゃん」
私を見つけて嬉しそうに笑う敦くん。
はい。その笑顔も反則です。
スーツの袖をまくって、ネクタイを緩めてる。
夜でよかった、顔が赤いのがバレない。
「ごめんね、夜遅くに」
申し訳なさそうな顔をする敦くん。
思わず首を大きく横に振った。
「大丈夫。ほんとに帰ってきたトコだったから。」
そんな私を見て優しく笑った敦くんにつられて、私も笑顔になる。
なんだろう、こうやって一緒に居るだけで、胸が苦しくなるよ。
『ちゃんと向き合ってみたら?』やっちゃんの言葉を思い出す。
そうだ、私はずっと逃げてばっかりで向き合ってなかった。
「ね、前も言ったじゃん、そんな見つめられるとキスしたくなるって。」