心を知っていたなら
ただ…付き合ってからが
えらかった。晃はホスト
松阪から毎日電車に乗っ
て名古屋まで出勤する。


同伴だ、アフタ-だと中
々時間が合わない。それ
に色恋営業も避けられな
いと来たら、さすがのあ
たしも…病んだ。


それでも別れたくないと
思わせるのが晃の魅力。
晃もあたしから離れなか
った。


「お待たせ。行こっか」


本屋までは歩いても知れ
ている。明け方まで浴び
るように酒を飲んでいた
あたし達が車には乗れな
い。


いつものように仲良く手
を繋いで、本屋まで歩く。


「9月ってこんなに暑い
もんかや?あっつ!!もお
こんなんやったら酒も抜
けるわな!!」

「こんなもんやない??多
分まだ夏なんやに。」

「お前何とかしろ。」

「は??どうやって??」


馬鹿な会話も幸せ。晃へ
の気持ちを再確認する瞬
間だ。


「俺向こうで漫画読んで
るわあ」


本屋に入ると、晃はさっ
さと漫画売り場へ捌けて
いった。


「何見よ…」


ぶつぶつ言いながら、色
んな売り場をうろうろす
る。結局いつものファッ
ション雑誌エリアで足を
止めて、雑誌に目を通し
ていた。


ぱらぱらペ-ジをくって
行くと、あるペ-ジに見
た事のある女性がうつっ
ている。


「あ…この人…」


塩山清良。あの深夜番組
に出ていた、大阪のスナ
ックのママさん。


『こんな女になりたい』
という見出しと共に、大
きく写真が出ている。
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