心を知っていたなら
いつもは飛ばしていくの
に、珍しく見入った。


清良さんはバツイチ。今
は再婚して、三人の子供
がいる。旦那がいる事も
子供がいる事も、絶対に
隠さないのがやり方。そ
して、何があっても女を
忘れない。


記事を読んでいて、同じ
スナックのママとして感
銘を受けた。


そのまま記事を読み続け
なければ、きっと衝撃を
受ける事も無かったのだ
ろうな…読み続けた自分
を恨めしいとすら思った
くらいだ。


『あたし、出身は大阪で
はないんです。三重なん
ですよ。二度と戻る事は
無いって覚悟して、大阪
へ来ました。ただ、心残
りは一つだけ…別れた主
人との間に、娘が一人い
るんです。その子を置い
て、出て来てしまいまし
た。今年で二十歳になる
子です。こんな事で、あ
の子への罪滅ぼしになる
なんて…これっぽっちも
思ってないですけど、お
店の名前は、置いてきた
娘の名前です。もう17
年会ってないし、きっと
恨まれてるでしょうから
会いに来てくれる事も期
待していません。…みな
さんが思っているよりも
あたしは…最低の人間で
すよ』


背筋が凍った。


こんな事、ありえないと
自分に言い聞かせる。絶
対に、絶対にありえない
はずだ。


記事の一番最後に書かれ
た清良ママの店の名前は



『嘉穂』



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