心を知っていたなら

16歳の夏-狂恋嘩-

「そいや知っとる??まさ
みさん、引退するらしい
で。ガキできたらしい」


チ-ムの中で一番の情報
通の春奈が煙草の煙を吐
き出しながら言った。


まさみさんって言うのは
あたし達のチ-ムだった
『狂恋嘩』の総長。狂恋
嘩はあたし達の代で七代
目の、地元で一番大きな
レディ-スだった。


あたしが狂恋嘩の新メン
バ-として旗揚げしたの
が十四歳のときで、その
時既に総長はまさみさん
だった。


やたら喧嘩が強くて、気
合い入ってて、下の子達
には本当に優しい人で…
狂恋嘩史上一番の総長だ
と言われてた。そんなま
さみさんはあたし達の憧
れでもあって、まさみさ
ん以外の誰かが総長なん
て事は考えられなかった。


「はあ!?まじ!?」

「相手ってもしかして…
例のあの人な訳??」

「信じられんわ…戦争に
なるんやないん??」


あたしの周りを取り巻く
ように座っていた、美也
子と芳江、いずみが口々
に喜びとは取れないよう
な言葉を口にした。


「誰の事なん??まず。」


まさみさんは憧れであっ
ても、彼氏の事とかそん
な事はどうでも良かった
から、まさみさんのお腹
の子の父親が誰かなんて
全く興味の無かったあた
し。


「って嘉穂何ゆうてるん
よ!!今さら乗り遅れすぎ
やない!?」

「そんなん…知らんもん
は知らんし。」


美也子のどアップから目
を逸らし、煙草を地面に
押し付けた。


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