心を知っていたなら
ぐっと拳を握って、一歩
を踏み出す。酔っている
のか、母親はデカイ声で
呂律のまわっていない言
葉を発している。男がそ
れを介抱しているのか、
たしなめる声もする。


「あえ-、あんら、みあ
このツレやねえ-!!とっ
とこ帰んな、人んちれ何
やってんだ」


あたしに気付いた母親が
、あたしをまくしたてた
。無視して、靴を履く。
酒臭い。飲んでいるあた
しが思うくらいだから、
相当飲んでいたんだと思
う。


「あんたらがみあこに、
まとわりつくから、みあ
こがグレんだよ!!分かっ
てんのか!!」


内心、我慢の限界だった
。美也子の気も知らねえ
で、何言ってんだこの母
親は。


言ってやれたら、どんな
にスッキリするんだろう
。でも、言ったら美也子
の我慢が無駄になる。歯
を食い縛った。


「美也子と同じ暴走族の
子やな。」


沈黙を守っていた男が口
を開いたと同時に、渾身
の力を込めて二人にガン
をくれた。


「そうやけど」


一言話せば、全て怒鳴り
散らしてしまいそうだっ
た。必死にそれを堪える。


「悪いが、美也子にはも
う近づかないでおいてく
れるか。今日入籍してな
、美也子は俺の娘になっ
た。美也子には金輪際一
切、暴走族をやめてもら
う。」

「てめえらには関係ねえ
こった。用があったら電
話してこいとか美也子に
抜かしたらしいな」


徐々に理性が飛んでいく


熱いものがこみあげてく
る。


「年上に向かって、口の
聞き方がなってない」

「じゃかあしいわ。結局
、おっさん、お前の体裁
やろが。美也子がどんな
気持ちでいるかなんか分
かりゃしねえわな。待っ
ても母親は帰ってこやん
わ、帰ってきたと思った
ら勝手な事言われて。知
ったこっちゃねえよ!!調
子乗ってんなよ」


次から次へ溢れる言葉を止められない。
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