心を知っていたなら
それでも感謝はしている
事に変わりはない。親の
いないあたしを育ててく
れた人たちだから。


そう思っているのも、も
しかしたらあたしだけか
も知れないけれど。


「ただいま-…」


小さな声でそう言いなが
ら実家の玄関を潜る。時
刻は深夜三時半…ばあち
ゃんも、じいちゃんもと
っくの昔に寝ている時間
だ。毎週月曜日には実家
で一泊する事が、一人暮
らしの条件。


それをあたしは忠実に守
っていた。


実家に帰った所で、心が
休まるものでもない。と
いうより、休まるはずが
ない。起きれば、ばあち
ゃんのお小言が降り掛か
ってくるし、じいちゃん
はじいちゃんで人を顎で
使うし。


その癖、実家に金を入れ
ろとか言うし。こんなん
なら、多少寂しくてもア
パートの方がゆっくり出
来る。
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