心を知っていたなら
眠たくもないし、する事
もない。美也子のその後
すらもあたしの脳裏から
は消え失せていて、まさ
に無心だった。


「中途半端に親がおるっ
て…どんな感覚なんやろ
…あたしもその部類なん
かなあ…お母さん生きて
るみたいやしな…」


独り言を呟きながら、部
屋着に腕を通す。特攻服
を壁にかけてからベッド
に座りなおして煙草に火
をつけた。


さっきまであんなに怒り
たおしていたのに、不思
議なくらい気持ちが落ち
着いていた。あの怒りが
何だったのかすら分から
ない。美也子を思って怒
った事は間違いないのに
、それ以上のものが無い。


「あたしって薄情やな」


呟いて目を閉じた。目を
閉じるとアルコールの力
だろうか、目の前がゆら
ゆらと動く。少し飲み過
ぎたか…そんな事を考え
ている内に眠りに落ちた。
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