心を知っていたなら
何時間が過ぎたのか、外
は昼間の明るさで日差し
が暑くて目が覚めた。ゆ
っくり体を起こして煙草
に火を点ける。


「あ-…今日の事が何年
も前に思えるわあ…」


独り言を言ってテレビの
チャンネルを忙しくなく
変える。ふと手を止めた
番組に見入った。


『あたしの道を行く』


そんなテロップが流れる
番組には、制服を着た女
子高生が映っていた。歳
は同じくらいで長い黒髪
とナチュラルなメイクが
映える可愛い子だった。


番組の内容は覚えていな
い。何でこの日に限って
あんなに色んな事を考え
たのかは、今になっても
分からない。


羨ましく思った。自分の
夢に正直に生きている様
が、本当に格好よく思え
て。同じ歳で、こんなに
自分と違う。あたしは、
おかしい。出来るのは喧
嘩と暴走、自慢できるの
は見た目だけ。あたしと
あの子は違いすぎていて。


「高校行っとったら…あ
たしもこうなれたんかね
え…そんな事もないか。
中学ん時からこんなんや
ったしなあ」


誰に話す訳でもなく、鏡
に写る金髪で化粧が崩れ
た柄の悪い女の子に話し
掛けた。


「もう引き下がれんわな」


夢もない、学もない。支
えてくれる人も、応援し
てくれる人もいない。
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