心を知っていたなら
おばちゃんは困ったよう
な顔をして、あたしの顔
から目を逸らした。


「誰に似たかなんて…あ
んた…何が聞きたいの」

「別に。何を聞きたいと
か、そんなん無い。おば
ちゃんの考えすぎじゃね
え??」


いつもなら、おばちゃん
にこんな事は言わない。
信頼なんかしていなくて
も、たった一人…身内で
笑って話せる相手だった
から。


「おばちゃん、帰って」


イライラしてきて、冷た
い言葉をぶつけた。


何も言わないで部屋を出
て行ったおばちゃんと言
葉を交わしたのは、結局
この日が最後になる。


大切に思われていて、そ
れを口に出さないだけ。


あの一言がどうしても信
じられなくて、信じる努
力もしないままあたしは
大人になっていく…この
頃から、その事にだけは
気付いていた。


冗談じゃない。


大切に思われているなん
て思った事は一度もない。


美也子の現状と、今の自
分の気持ちを重ね合わせ
た。居てほしい時に居な
い。支えてほしい時に、
望む言葉など聞けない。
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