心を知っていたなら
『この根性無しが』

『あんただけやに。従兄
弟らはあんなに出来がい
いのに』

『居てもいなくても同じ』

『お母さんと一緒だよ。
お前の性悪は!!』


あたしの存在なんて、き
っとみんなどうでもいい。
だったら、そんなどうで
もいい存在のあたしを精
一杯受け止めて来てくれ
た相手に誠意を尽くす。


気付くと走りだしている
自分がいた。元来た道を
息を切らして走って走っ
て、脳裏をかすめていく
美也子の笑った顔を見る
んだ…自分に言い聞かせ
て。


だけど、胸の中を埋めて
行く胸騒ぎは何だろう。
カチコむ時にも感じた事
の無い、真っ黒で悲しい
『何か』。


「変な気起こすなよ…美
也子…」


美也子の家までは、休ま
ないで走っても後十五分
はかかる。あれから何時
間も経っているんだ、今
更何も無いのは分かって
いたけど。


胸騒ぎに押し負けるかの
ように、あたしは走った
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