心を知っていたなら
何がそんなに気に入らな
いかと聞きたくなるほど
ハッキリと眉間に皺をよ
せて、あたしを睨みつけ
ている。


「…あんだよ」


いつもならこの台詞と一
緒に、負けじと睨み返す
のに…今日は…今日ばか
りは睨み返して、家庭内
暴力さながらに暴れる力
すら残っていなかった。


「あんたねえ…」


あたしを前に置いて、何
やらながったらしく説教
をしていたけど、どの言
葉もあたしの耳には届か
ない。


聞こえてくるのは、さっ
きの美也子の声だけだ。


理由も分からない。ハッ
キリと分からないから、
気持ちが悪い。朝、暴れ
たからなのか、違うのか
それも分からないからど
うしようもない。


あたしはとにかく、大切
な物を失った。


あたしを受け入れてくれ
た宝物を失った。


部屋に戻って、冷蔵庫に
ある缶ビールを荒々しく
取り出して一気に飲み干
した。


飲まないでやってられる
か、あたしにはもう何に
も無い。


結局一人なら、いっそパ
クられて少女院にでも入
っていたい。分かってい
る事なのに、自分は誰に
も受け入れてもらえない
という事実を前に、途方
に暮れる事しかできなか
った。
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