心を知っていたなら
「水商売の何が駄目?」


一人立ち止まって呟いた。


自然に涙が溢れてくる。
あたしだって、必死だっ
た。親が居ない引け目を
周りに悟られたくなくて
中学に上がるまでは勉強
だって頑張った。


誉めてもらえたら、今は
違っていたのかも知れな
いのに。


あたしだけ、認めてもら
えない辛さが今のあたし
なんだって伝えられたら
どんなに楽なんだろ。


結局あたしの武器になっ
たのは、親譲りの完璧な
美貌とモデル並のスタイ
ル。それだけが、あたし
が戦える『物』。


化粧が崩れるとか考えな
いで、あたしは泣いた。
泣きながら歩いた。


実家からアパ-トまでは
徒歩なら一時間はかかる
距離にある。


「酒買ってこ…」


崩れた化粧を隠すために
サングラスをかけて、近
くのコンビニに入る。と
りあえずビ-ルと、水割
りを作る為のミネラルウ
ォ-タ-を籠に入れて、
意味もなくコンビニをう
ろうろする。
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