心を知っていたなら
―ドンッッ…


「あ!!すいません!!」


一瞬ぼうっとしていたの
か、あたしは思い切り女
の人にぶつかった。


「ごめんなさい、何も落
としたりされなかったで
すか?」


急いでサングラスを外し
て女の人の人を見上げる。


バレ-の選手と見違える
ような長身、歳は四十歳
くらいだろうか。その人
は驚いたような顔であた
しを見つめている。


「本当にすいませんでし
た。それじゃ…」


あたしが背中を向けよう
とした時、女の人が口を
開いた。


「か…ほ?嘉穂やな?」


名前を呼ばれて振り返る
と、ぶつかった女の人は
ポロポロ涙をこぼして、あたしを見ていた。


「あの…何であたしを」

「大きくなったな…若い
頃のお母さんにそっくり
やわ…」


あたしの体の中を、その
一言が電気のように走り
抜けていった。


お母さん…?この人、お
母さんを知っている?


「ちょっと話せる?」


あたしの言おうとした事
を、その人は先に言って
しまった。あたしも頷い
た。


レジを済ませ、二人一緒
に外に出る。夏の日差し
がきつく跳ね返る。
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