いなくなる
雅樹は改めて確認するように教室を見回した。


「・・・1」


「・・・2」


「・・・3」


雅樹の後ろの席で隆志は睡魔に負けそうになっていたのだが、突然教室内を何かに憑かれたように見回す雅樹の姿に驚き声をかけた!


「・・・おい雅樹?」


「・・・いない・・・」


「・・・えっ?」


「・・・いないんだ・・・」


「いない? 誰が?」


自分と視線も合わさず、雅樹は教室を見回している?


何か動揺しているように見える?


こんな雅樹は、初めて見た!


「・・・雅樹どうした?・・・何かあったのか?」


隆志の言葉が聞こえているのかいないのか?雅樹は隆志に返事もせずに、
まだ教室をしきりに見回している?


「・・・5人・・・」


「えっ?」


「また5人・・・いない・・・?」


雅樹は、呟くような小さな声で言った。


「えっ?・・・なに?」


隆志は、雅樹が小声で発した言葉を聞き漏らしてしまった。



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



教室に響くチョークの音が、雅樹の声を聞きとれにくくしている。



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


「たっく!カリカリ、うるさいてんだよ…」



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



隆志はそう呟きながら黒板に向かうアイツの背中を睨み付けていた



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



いつのまにか隆志は、アイツの単調なチョークの音色に導かれるように睡魔に誘われていってしまった・・・・・
< 10 / 61 >

この作品をシェア

pagetop