いなくなる
利沙は再確認するように美奈に聞いた。


「美奈!本当に何もされなかったの!」


利沙の迫力に、無言で何度もうなずくだけの美奈。


「じゃ、さっきの悲鳴は何なの!」


まだ興奮が冷めないのか美奈に対しても利沙の口調は強い。



詰め寄るような利沙の問いかけに、少し気後れする美奈。



「・・・な・・・なんにもされてないよ」



「ただ目を覚ましたら、その人が目の前に立っていたからビックリしただけだよ」



利沙は、雅樹の方を振り返り改めて問いただす。



「あんた!いったい何で寝ている美奈の前に立っていたのよ?」



「えっ?」


「・・・あっ!」


雅樹は利沙の一言で、自分が保健室に来た理由を思い出した。



雅樹は保険医の小沼の方を見て聞いた。


「先生!3年D組の生徒が、誰か来ましたか?」


保健室の騒動の、ただの傍観者になっていた小沼は、いきなり雅樹に問い掛けられ戸惑てしまった。


「・・・えっ!・・・なに?・・・えっ?」


「だから3年D組の生徒ですよ!3年D組の生徒が誰か来ましたか?」


強い口調で聞く雅樹の迫力で、保健室にいる全員が小沼の方に注目する。


「・・・3年D組・・・?」


「そうです!3年D組の生徒です!誰かここに来ましたか?」


「・・・来てないわよ」


「本当に?本当に誰も来ていませんか!」



動揺するように小沼に聞き返す雅樹の表情に保健室の空気が変わった。
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