いなくなる
「雅樹、落ち着けって!」


隆志がなだめるような口調で言う。



利沙が隆志に小声で聞く。


「・・・ちょっと隆志、この人どうかしたの?」


隆志にも、今の雅樹が理解できない?


「・・・ん?・・・いや大丈夫だから・・・」


利沙に明確な答えを言えない隆志は曖昧な返答をする。


利沙は、隆志の返答を不満に感じ、強い口調で言った。


「大丈夫って、なにがよ!」



その隆志と利沙の会話を、後ろで聞いていた幹男は考え続けていた?


・・・この二人、どういう関係なんだ・・・?





「え~と。高橋くん、いったいどうしたというの?」


雅樹の名札を確認して、今度は小沼が雅樹に問いかけた。




・・・ふ~ん、苗字は高橋というんだ・・・


利沙がそう思った時と同時に、ベッドの上で上半身を起こしている美奈が、雅樹を見つめて嬉しそうな表情をしているのが目に入った。


「たく・・・美奈、あんたって子は・・・」


利沙の視線に気づき、なぜかピースサインをする美奈。



それと、同時に小沼が美奈の方に視線を向けて言った。



「今日は、竹田さんだけしか保健室には来てないわよ」



みんなの視線が、ピースサインをしている美奈の方に集中した。



突然、みんなの視線にさらされて慌ててピースサインをしている手を後ろに隠し、
意味も無くみんなに向かってペコリとお辞儀をする美奈。


そんな美奈に向かって、声を出さずに「バ~カ」と伝える利沙。


美奈は、雅樹が小沼の方へ視線を向けるのを確認した後、利沙に向かってアッカンベーと下を出し返した。



・・・幹男は、その仕草を見て思った・・・




・・・可愛い・・・




・・・雅樹と隆志に比べ、緊張感も危機感も無い幹男であった・・・
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