いなくなる
話を聞いても納得できていない様子の雅樹の表情を読み取り、隆志が言った。


「あいつが言うには、いまこの教室に残っている10人は予防接種の注射をしている者と、一度発病して体に免疫ができている者ばかりだから大丈夫だそうだ」


「雅樹も、そうなんだろう?」


「えっ!・・・あぁ、たしかに小学生の頃に、はしかに掛かったけど・・・」


「だろ!これで教室から生徒がいなくなった理由もはっきりしたな」


「クラスで、はしかに掛かった者が次から次へと出たと知ったら生徒らは動揺してしまうからな、アイツも結構教師らしい判断をするんだな」


明るい口調で、言う隆志とは裏腹に雅樹の心の中では疑問と不安が強くなってくる・・・


「アイツが、そんな判断を・・・?」


「そう、アイツがね!少し見直したな」


雅樹は、隆志から聞いた話を改めて考え直してみた。



・・・はしか・・・



・・・みんな、はしかで早退した・・・?



・・・本当なのか・・・?



・・・どこか納得できない・・・



・・・なんで、1時間事に5人ずつ発病して早退したのだ・・・?



・・・そんな事、ありえるのか・・・?



・・・それに、保険医の小沼先生は、俺にはしかの事など何も言わなかった・・・?



・・・俺は、3年D組の生徒が保健室に来たのかと尋ねたのに・・・?



・・・小沼先生が、俺に嘘を言ったのか・・・?



・・・でも、あの時の小沼先生が嘘をついているとは思えない・・・





雅樹の中で、言い知れぬ不安がまたも蘇ってくる。
< 28 / 61 >

この作品をシェア

pagetop