いなくなる
隆志は、うなだれている雅樹に向かって力強く言った。


「雅樹、解った!教室を出よう!」


隆志の言葉に、教室のクラスメートたちが動揺する。


「隆志、お前まで何言ってるの?」


「まぁ、20人が早退しているんだから、今更2人ぐらい消えてもどうってこと
無いんじゃないの?」


「アイツには、お前らが勝手に帰ったと報告するけどね」


隆志は、帰り支度を始めながら言った。


「アイツには、俺達の事は好きに言っといてくれ!」


「ほら、雅樹に幹男!さっさとしろよ、早く出るんだろう!」


「へっ?あぁ、解った」


自分も、勝手に帰る者の一人に既になっている事を知り、慌てて帰り支度をする幹男。


残りの7人は、三人の行動が理解できぬまま、ただ見つめているだけだった。


その中の一人が思いついたように言った。


「・・・それにしても、何でアイツは教室に来ないんだ?」


・・・アイツという言葉に、雅樹の手が止まった・・・


雅樹は、アイツの存在を、今の今まで忘れていた・・・


アイツの話題をするクラスメートの話しに耳を傾けた。



「 ・・・4時間目までは始業のチャイムが鳴ると、アイツは必ず現れていたよな?」


「あぁ、時間を守る事だけが、アイツのただ一つの長所だからな」


「そうそう、アイツの授業は退屈だけど、チャイムと共に延長もせず授業を終了してくれるからね」


「他の先生達は、授業が中途半端のとこでチャイムが鳴ると5分ぐらい延長するからね」


「短い休み時間なんだからその5分は貴重なのにな!」


「・・・それにしても、アイツ5時間目が自習なんて言ってなかったわよね?」


「4時間目の終わりには、アイツは何も言ってなかったぞ?」
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