いなくなる
隆志に言われて帰り支度を済ませた幹男は、みんなが何度も教師であるアイツを、アイツ呼ばわりしているのを聞きながら思った・・・


・・・アイツも、一応教師なのだから一回ぐらい名前で呼んでやればいいのに・・・


「・・・!」


「あれ?」


・・・幹男は、アイツの重要な、ある事に気がついた・・・



・・・雅樹さえも気づかなかったある事を・・・・



・・・誰も気づかないある事を・・・


「ほら!雅樹、帰り支度を急げよ!」


アイツという言葉に、帰り支度の手を止めていた雅樹を隆志がうながす。

隆志に言われて、急いで帰り支度を済ませる雅樹。


幹男は、アイツの事で気づいた重要な事を言おうとした。


「なぁ・・隆志・・・?」

「幹男は、もう済んだか?」


隆志が、幹男の声とほとんど同じぐらいに声をかけてきた。


「えっ!あ・・あぁ、もう済んだよ!」


幹男は、自分だけが気づいた事を、隆志に言おうとしたが言いそびれてしまった。


雅樹も帰り支度を済ませ、隆志を先頭に三人は教室を出ようと教室の扉に向かう、
そして隆志が扉に手をかけ開けようとすると・・・


ガラッッーーー!


隆志の意思とは関係なく教室の扉が開く。


「うわっ-!」


突然開いた扉に驚く隆志の目の前に、アイツが立っている。


「おや?どうしました、隆志君・・・?」


アイツは、目の前に立つ隆志を押し戻すように教室に入ってきた。


「どこに行くのです、まだ授業中ですよ・・・?」


そう言うと、アイツは静かに教室の扉を閉めた。

「・・・いや!・・・あの!・・・その・・・」

突然の、アイツの出現に気後れした隆志は言葉にならない。


「さぁ!みなさん席についてください」

アイツに言われ教室の生徒達は、自分達の席に戻っていく。


雅樹と隆志と幹男を除いて。



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