いなくなる
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


・・・解らない・・・


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


・・・アイツの・・・


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


・・・アイツの名前・・・?


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



「アイツの名前が解らない!」


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



一心不乱に黒板に文字を書き込む、アイツの背中を直視して雅樹は考えた。


なぜ俺や幹男は、アイツの名前が解らないんだ?


隆志や他の生徒は知っているのか?


いや、おそらく隆志も他の生徒達も、アイツの名前は知らないであろう。


情報通の自分が知らないのに、他の生徒達が知っているとは思えない。


それに、クラスの誰一人アイツの名前を呼ばなかったではないか。


では、なぜ自分はアイツの名前を知らないのだ?


しかも、知らないという事に、自分が今までなんの疑問も持たずにいたなんて・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・アイツ・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・アイツは・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・誰なんだ・・・?



一定のリズムで黒板に書き込む、アイツのチョークの音が雅樹の思考を鈍らせていく。



その思考の鈍りは、やがて睡魔に変わり雅樹を深い眠りへと誘い始めだしていった。
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