いなくなる
雅樹は、素早く隆志の右手からシャープペンを抜き取り、隣で眠っている幹男の右手に突き刺し始めた。


いま目の前で起きている事が、理解できずにいる隆志は動揺する。


「まっ!雅樹やめろって!」


隆志の言葉を無視して、雅樹は幹男の右手に突き刺したシャープペンに力を込める、
シャープペンを突き刺された幹男が隆志の反応より鈍く目覚め始める。


「ん・・・あれ・・・?雅樹どうした・・・?」


幹男は、寝ぼけまなこで視線を、雅樹が自分の右手を掴んでいる事に気づく。


そして、その先の手のひらにシャープペンが突き刺さっていることも。

「いっ!痛ったー!」


幹男が、そう叫びそうになるのを雅樹が口を押さえ止める。


「しっ!静かに!」


雅樹は、幹男の手のひらからシャープペンを引き抜くと、振り返り教壇のほうを見る。



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


アイツは、何事もないように黒板に向かって書き込んでいる。


「雅樹、どうしたというんだ?いきなり俺達の手にシャープペンを突き刺すなんて。」


隆志の問いに、再び振り返り答える雅樹。


「二人が眠っていたから、起こすためにしかたなく刺したんだ」


「起こすために・・・!」


雅樹の予想外の答えに、シャープペンの突き刺さっていた場所を左手で押さえながら
隆志と幹男は唖然とする。


「起こすために、シャープペンを突き刺したのか!」


「そんなむちゃくちゃな!」



雅樹は、二人の怒りを受け流すように隆志と幹夫の言葉を制止した。



「文句なら後で何度でも聞くから、今はとにかく俺の言うとおりにしてくれ頼む!」
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