いなくなる
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


相変わらず、あいつが黒板に書き込むチョークの音が教室内に響き渡る。


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


恐怖のあまり、幹男が泣きそうな表情を雅樹に向けて言う。


「やばいって!それってかなり、やばいって事だろう?」


「ああ、かなりまずい状況だと思うな、周りを見てみろよ」


雅樹にうながされて周りを見てみると、隆志の目には信じられない光景が映った。


隆志は、その光景を見て恐怖した。



「い・・いない!」



隆志の言葉に、頭を抱えて打ちひしがれていた幹男が顔を上げて問いかける。



「い・・いないって誰がさ?」



「バ、バカ!よく見ろって!さっきまで間違いなくいたはずの5人が、教室にいないんだよ!」


「えぇぇー!」



隆志に怒鳴られ、慌てて教室を見回した幹男の目に映った光景は以上であった。


その光景は、自分たち3人と離れた前の席に座る2人と黒板に向かうアイツの6人が教室にいるだけなのである。


ほんの先ほどまでは、確かに教室にいた5人の生徒が、自分達も気づかぬ内になんの痕跡も残さずにいなくなっているのである。


今回こそは、その事実を確かに自覚した幹男は、恐怖のあまり体中が震えだしてきた。


「う・・嘘だろ・・・こんなの嘘だろ!」


いま3年D組のクラスに存在するのは、アイツと残りの5人の生徒だけ・・・



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



教室に響わたるチョークの音に、幹男の恐怖はさらに強くなっていった。
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