いなくなる
「ど、どうすんだよ!どうすんだよ、なぁ雅樹!」

「俺、いなくなるなんて嫌だ!絶対嫌だ!」


「落ちつけ幹男!」

隆志は、取り乱す幹男を制止して雅樹の言葉を待った。


雅樹は、視線を二人に向け、この最悪な状況を乗り切る手段を考える。


・・・どうする?・・・どうすればいい・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



再び、雅樹の思考を乱すように、あいつのチョークの音が耳元に響く・・・



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



沈黙に耐えられなくなった幹男が、ヒステリックな口調で叫ぶ!


「雅樹!雅樹ってば!どうするんだよ!」


今度は、隆志も幹男を制止しなかった、いやできなかったのである。


隆志にとっても雅樹の言葉だけが救いなのである、雅樹の沈黙には耐えられそうにない。


雅樹は、二人に向ける視線をそらさずに考え続ける、二人が自分を頼りにしている事は十分に理解している、だからこそ自分が視線をそらさぬ事が二人の不安を抑える事だと思うから。



「二人とも、よく聞いてくれ!とりあえず、いま俺達がしなくてはならない事は、絶対に眠らない事。そして、5時間目の授業が終わったら、すぐに教室を飛び出すんだ!」



「そ、そんな事で助かるのか・・・?」



恐怖に蒼ざめた表情で、幹男が雅樹にすがるように言った。



「あぁ、今朝からの事を整理して考えてみると、いなくなることには法則があるみたいなんだ」


「法則・・・!」


またしても、雅樹の意外な言葉に驚く隆志と幹男であった。
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