いなくなる
雅樹は、二人を励ますように言葉に力を込めて離し続けた。


「最初に、消えたのは塩田たち5人だったろう?」

「そして、授業の時間中に5人ずつ、いなくなっていった」

「つまり、いなくなるのは授業中の5人だけなんだ」



「5人だけ・・・?」


「そう、5人ずつ いなくなっているのだから、この5時間目は俺達がいなくなることは無いはずなんだ」


「もう5人が、いなくなったから・・・?」


危機的状況であっても、幹男の余計な一言癖は直らないようだ。

3人の場の空気は瞬時に暗くなっていき、幹男の一言によって雅樹も沈黙してしまった・・・




気まずい時が流れる中、雅樹は自分自身に言い聞かせるように2人に言った。


「そうだ、既に5人いなくなっているから、俺達が助かる可能性は高くなった。5時間目が終わり次第、前の席に座っている2人を無理矢理にでも連れ出し、この教室から脱出するんだ!」



「そのためにも、絶対に5時間目の授業は眠らないようにお互いが注意しあうんだ」



隆志と幹男は、雅樹にシャープペンで突き刺された傷を見つめ無言でうなずいた。




「ところで、前の席の奴らはどうしているんだ?」


隆志の発言に、雅樹と幹男も視線を前に向けてみると、2人は既に眠っている。


幹男は、慌てて雅樹に言った。


「あの2人、やばくない?もう眠っているぞ!」


「いや、大丈夫だろう。あの2人が眠っていても、5時間目が終わった時点で俺達が連れ出せば、なんの問題も無い」


「まかせろ!俺が1人を担ぐから、2人は残りの1人を頼む」



危機的状況を打開する手段ができて、隆志の声にも気力が戻ってきたようだ。
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