いなくなる
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



教室内では、黒板に向かってひたすら文字を書き込むアイツと、身動きできずに倒れ込んでいる雅樹の二人だけになってしまった。



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



とうとう雅樹の足元の教室の床下からも、霧のようなものが噴出してくる。


その霧のようなものは、足元から徐々に雅樹の体を這い上がっていった。



雅樹は絶望と恐怖の中、思っていた。



おそらく自分以外の者達は、この恐怖も眠っていたから知ることも無く消えていったのだろう・・・


しかし、自分は意識があるから、これから自分の身に起こる恐怖を実感しなければならないのだと。




・・・これではまるで、背後から蛇に食われていくカエルのようだ・・・




徐々に蛇に飲み込まれていくカエルでもおそらく意識は、はっきりしているであろう。



そのカエルの目の前に広がる世界は、今の今まで自分が自由に生きていた世界である。


しかし、カエルの背後の世界は、絶対の死が待つ蛇の胃袋の中・・・





・・・カエルは、どんな気持ちで蛇に飲み込まれていくのだろう・・?





やがて霧のようなものは、雅樹の全身を覆っていった・・・




・・・お、俺は・・・し、死ぬのか・・・?





・・・そ、それとも・・・




・・・い、いなくなるのか・・・?
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