いなくなる
突然、名指しされた隆志と稔は飛び上がるように席を立ち黒板に向かう。


驚いたのは名前を呼ばれた隆志と稔だけでは無かった。


アイツの授業の仕方に不振を感じた瞬間に、いきなりアイツと視線が合ったような気になり雅樹は動揺してしまったのである。


・・・俺とした事が情けない・・・


常に冷静沈着を心情にしている雅樹は、アイツの視線に動揺してしまった自分を恥じていた。


・・・まだまだ修業がたらんな・・・


苦笑いをしながら、そう自分に言い聞かせるように雅樹は心の中で呟いく。


黒板の前では隆志と稔が悪戦苦闘していた。


雅樹は、修業という陳腐な言葉で自分の動揺を打ち消そうとしている事に気付き、また心の中で呟いた。


・・・修業って・・・なんの修業だよ・・・?


一人乗り突っ込みのような自分の思いに雅樹は心の中で苦笑いをして、その笑いが表情に出ないようにと、気を引き締め直してた。


その雅樹の横を、なんとか問題を解いて席に戻る稔が通り過ぎて行く。


隆志は、まだ黒板の前で悪戦苦闘しているようだ。



雅樹は、この瞬間に自分に起きている異変に気づく事は無かった。



雅樹の思考からは、なぜか空席になっている5人のことが・・・




・・・いつのまにか・・・




・・・雅樹の気づかぬうちに・・・





・・・消えていた・・・
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