風にのせて君へ


って言うか、え?



「雪先輩、なんでピアノ弾いてるんですか?」


「あ、それ訊いちゃう?」



ははっと笑って淡々と言う雪先輩。



「もともと、親にやらされてたみたいな感じ。それで3年のピアノコンクールの代表に選ばれちゃったってわけ」


「じゃあ、今の曲はそのとき弾く……」


「違うよ。ただの手慣らしに」



ひえー、手慣らしであんな曲弾いちゃうなんて。


雪先輩、3年には上手い人いないって言ってたのに自分が上手いってわけだったんだ。


そこを自慢しないところも、また良し!



「……で、乙冬ちゃんはいつまでそこにいるのかな?」


「だって、聴きたいですもん。先輩の曲」


「もう。じゃあ、ちょっとだけだよ?」



そう言って鍵盤に手を置く先輩の指は細くて長かった。


雪先輩の指が白鍵を、黒鍵を叩いて音を奏でる。


すんなりと心の中に入ってくる曲は、奏先輩と似ているようで雪先輩なりの特徴がある。


すごいなぁ。

私もこんな風に弾けたらなぁ。



曲の中盤部分で音楽室のドアがゆっくりと開くのがわかった。

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