風にのせて君へ



とくん、と前にも聞いた音。



私は音の聞こえたほうを向いた。

どうやら、奏先輩と雪先輩方面から聞こえたらしき音。


でもこんな音の楽器ないよなーと思ったとき、もう一度とくんと聞こえた。



もう一度聴いて、

これは奏先輩あたりから聞こえているのがわかった。


もしかしたら、



「あー! 私、部活行かなくちゃ」



雪先輩は椅子から球に立ち上がると、じゃあねと言って慌ただしく音楽室から出て行った。


しばらくしんとした空気が流れたが、私は奏先輩に訊いた。



「雪先輩、部活って……」


「テニス部だよ。しかも、エースだし」


「あー、それっぽいです」



私はキーボードから離れ先輩の方へ近寄る。



「じゃあ、次は奏先輩の番ですよ」


「何が“じゃあ”だよ」



それに、と奏先輩は付け加えた。



「アイツのが引いた後に弾けるかよ……」



そう言うと、もう出るぞと奏先輩は言った。

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