風にのせて君へ
* * *
「おっはよーございます、奏先輩!」
私は朝早くから音楽室に来て、奏先輩を待っていた。
私を見た奏先輩はげ、と言う顔をして音楽室のドアを閉めようとした。
「ちょーまって、まって!」
「なんでお前がいるんだよ!」
「ここの学校の生徒が学校来ちゃいけないんですか!」
奏先輩ははーっとため息をついてドアを開けて、音楽室に入った。
「んじゃ、弾いてください」
ピアノのイスに座った奏先輩は苦い顔をしてじっと私の顔を見た。
「お前、風邪ひいてたんじゃないのか?」
そんなこと訊くってことは、もっと長く風邪にかかっとけばいいってことですか。
「もう元気ハツハラツですよ! さ、弾いてください」
奏先輩は、1回だけだぞ、と言って弾き始めた。
私は奏先輩の演奏を突っ立ったまま聴いていた。
……やっぱり、すごいなあと思う。