風にのせて君へ
昨日、私が弾いてみようとしたらあの有様だった。
私がピアノを習っていた頃、
どんなことにもめげないで続けていたら
こんな曲が弾けたのかな?
奏先輩は曲を弾き終わり、
私のほうを向いた。
「……星野?」
あれ、どうしたんだろう私。
なんで奏先輩が霞んで見えるんだろう。
「泣いてるのか?」
なんでこんなに悲しくなるんだろう。
そんな曲じゃないよ、
奏先輩が弾いていた曲は。
優しい曲だったじゃない。
優しい曲だったから……
私は涙を拭ってにいっと笑った。
「やっぱり奏先輩は上手いです。感動しちゃった」
「……俺は上手くない」