風にのせて君へ
奏先輩は続けた。
「小さい頃からピアノ習ってて、それでも親に無理矢理させられたみたいな感じで」
似てるなって思った。
「だから、嫌になって途中で逃げ出したけど」
私と一緒。
「この音楽室で雪のピアノを聴いて、もう一度やってみようかなって思った」
なんだか、私とそっくり。
「それでピアノ弾いてるところ、雪に見られて『へたくそ』って言われた」
「それはいつの時ですか?」
「高1の半ばくらい」
そのとき話をしていた奏先輩は楽しそうだった。
楽しそうな奏先輩の一方で私はどんどん苦しくなっていった。
もやもやが、
胸を締め付けていく。
「そのときから……」
私は何がしたかったんだろう。